「建築士」2月号に二宮のコラムが掲載されました


関係を豊かにする為に、混ぜること。

 豊かな建築とはどの様なものであろう。建築はもちろん安全な構築物でなければならないし、温熱環境も重要、かつ経済的な合理性も必要であろう。しかし、私が今もっとも重きを置いているのは、その建築を通して様々な関係がうまれ、育ち、変化していくことである。人と人、人と物、人と組織、人と環境、等々の様々な関係が生まれ育つために、様々な機能や場所、環境を混ぜることがよいと思っている、建築を考える場合、多くは依頼があって仕事が始まる。必要な機能、必要な諸室はあらかじめ決まっている場合が多い。
しかしそのような場合であっても、プログラムから考えることでお施主さんに提案できる場合もある。また、建築の機能から考えるのではなく、様々な場所を混ぜることで建築を活性化することも可能である。広い〜狭い、明るい〜暗い、高い〜低い、開かれている〜閉じている、暖かい〜寒い、等々である。バリアフリーの条件も何をフリーにするかを考える、温熱環境を重視する場合も夏の場所と冬の場所を造れないかなどである。人びとが感じる心地よさの感覚はその時の健康状態や精神状況によってかなり変わるものであるし、住居を設計する場合にも出来うる限り様々な場所が混じり合う空間を作ることが、愛され長続きする建築に結びつくのではないかと思っている。
 ランドスケープの仕事で街づくり(分譲地の開発)の仕事をしているときにいつも思っていたことは、官民の境界や民民の境界を曖昧にして、混ぜることが出来ないかということであった。道を歩いているときにどうやって拡がり感を創り出し、ワクワクするような景観を創り出していくか、その時にも、混ぜることが非常に有効な方法であると感じていた。

 今、北海道の温泉施設の仕事をしている。道の駅であり、温浴施設であり、イベントを行える施設であり、飲食施設、物販施設の混じった多様な機能が混在する建築である。その様々な機能を温泉街を新しく創るというコンセプトでまとめようと計画を進めている。混ざり合うことが賑わいを生み、地域の活性化に役立てばと思っている。