「建築士」1月号に二宮のコラムが掲載されました



街を豊かにする為に、開くこと
 建築を設計するときに、第一に考えていることは如何に街に関係するか、街に開いて関係を豊かに出来るかと言うことである。言うまでもなく、建築は様々な機能を満たし、それを使う人びとの要求を満たさなければならない。自然環境から人間を守り、様々な社会活動を支援しなければならない。しかし、最近の建築のクローズドなしつらえには疑問を感じることが多い。
 マンションのオートロックシステム、過度な個人住宅のセキュリティーシステム、個人情報保護法以降の事務所のセキュリティーシステム等々、街や社会から切り離された場所を作ることに建築の設計者が荷担していると思わざるを得ない状況である。都市における住宅地は明治時代以降、武家屋敷の様に敷地周囲が囲われた計画が上等な宅地として認識され、長屋のような開かれた庶民の建築は下に見られていたのも事実であろう。私が子供の頃に育った昭和40年代の住宅地でも道路境界と敷地境界はブロック塀や生け垣で仕切って、閉鎖的にすることが普通の宅地景観であった。しかし、これからの個人化や高齢化が進んでゆく社会では、これまで以上に周辺環境および社会や他者との関係を構築し易い建築が必要になると思っている。
 7年前に自邸兼事務所を建築したが、出来うる限り街に開き、街を歩く人たちがふらりと寄ってもらったり、道路に面した前庭に腰をかけて休んだり、果樹がなったときにはお裾分けをしたりできる、社会とつながる建築にした。住居専用地域に周辺環境に開かれた建築を創り、賑わいを創出し、街に活気を創るためには、昼間の時間に人びとの活動が見える建築を混在させることが非常に有効であると考えている。昼間人口の少ない住宅地にこそ、生活環境を悪化させない程度の事務所や店舗建築が混在し易い様に建築基準法を改めることが、街に刺激を与え、住んでいる人びとの顔の見える街にするために有効であろう。隣に誰が住んでいるのか、隣でどの様な活動をしているのかわからない建築から、少しでもお互いに情報をやり取りできる建築が増えていく事を望んでいる。

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